━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

             お や ぢ の 独 白 2
2001/09/23 Vol.010
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■初夜権と教祖の御目合問題

・S子女史のの特別寄稿より

カフカの『城』
主人公の測量士Kは、いつまでたっても城とその村に所属することができない
異邦人。存在のゼロ地点(存在を喪失している状態)から、存在の数値を獲得
するために苦闘する。

自分も、いかなる世界にも所属し得ない存在であるような気がすることが多々
あるから、主人公の立場はよく分かる。
それは私が統一教会という特殊な世界に長くいたからとも言えるが、元からそ
んな非存在の「傷」があったように思う。

「この傷−−、それは治らない、なぜならそれがかれ自身なのだから−−にこ
そ、そしてこの孤独にこそ、かれは駆けこまなくてはならない、そこにかれは
、かれの芸術(人生)に必要な、力、大胆さ、巧みさを見い出しうるだろう」
(ジャン・ジュネ)

この傷、それは治らない、なぜならそれが私自身なのだから……
結構でしょう、よくぞ言ってくれました。(ジュネは正真正銘の泥棒で、とう
ぜん同性愛者でした)
カフカの『城』も何かを象徴するように、未完で終わっています。

それはそれとして、I氏によれば、この本には血分け、体じゅつ、御目合問題が
描かれているということでした。

中世ヨーロッパで領主が花嫁の初夜をともにする権利を持つ、いわゆる「初夜
権」、古代バビロニアのすべての女性は生涯に一度、愛の女神の神殿へ行って
すわり、誰か外来の異邦人と性交することになっていたという「神殿娼婦」。
その他なんとでも言ってください。心理的には同根です。

小説の主題がそれというわけではないようですが、城の高級役人と村の女性と
いう関係で、それらしきテーマが断続的に出てきます。

>>だが、教祖だからこそ、人類の救い主だからこそ、不特定多数の婦女子との
御目合を認められる、あるいは権利があるとも云えるのである。(『おやぢの
独白1』Vol.041より)
そのテーマが、現代の、それも自分が属していた団体という、ここまで身近に
来られると、アホらしくて、「オイオイ、教祖のオッサン、勝手にヤレるだけ
ヤッチくれ!」と投げたくもなるが、女性としては心理的に根深いものがある
ので、目をつぶって続けることにしよう。

たとえば、城の役人から下品な誘いの手紙を受け取ったが、ビリビリに破いて
使者に投げつけてしまった村の娘アマーリア(彼女の一家はそのためになんと
なく、完璧に没落する。なんとなく、というのがオソロシイ)の姉オルガのセ
リフ、
「お役人が失恋するなんてことは前代未聞です」
「女性というものは、お役人にいったんこちらを向かれたら、相手を愛さざる
をえなくなってしまうのです。それどころか、どんなに否定しようとおもった
って、そのまえからすでにお役人を愛してしまっているのです」(P329)

また、城の高級官僚の元恋人だか愛人で、今は主人公Kの婚約者になっている
フリーダが、アマーリアについてKに言うセリフ、
「あなたは、あらゆる女のなかでいちばん恥知らずのあの娘を慎み深いとおっ
しゃるのね」
「あなたは、誠実とはどういうことか、わかっていらっしゃらないのね」(P40
6,407)

などにみられるのが、城と村全体の空気のような当然の価値観というわけです
。カフカ作品の高い観念性からすれば、これは現代よくあるセクハラ、不倫、
買春、愛人問題という平たい問題だけではなく、「初夜権」的な象徴があるこ
とは十分伺われれるのではないでしょうか。

つまり、女性側から言うと、等身大の一人の男性と家庭をもつ(=結婚)以前
に、超越したもの、聖なる存在、神々の代身(とみなされるもの)を愛し身を
捧げる、愛の女神へのイニシエーション、そういう願望をもつ心理です。

参考文献:
『聖娼』N・クォールズーコルベット著(日本評論社)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆おやぢのホウムペエジ
http://www.interq.or.jp/world/kyogoku/
◆對話ルウム
http://cgi.members.interq.or.jp/world/kyogoku/cgi/bbs.cgi
……………………………………………………………………………………………
◆登録/解除
http://www.interq.or.jp/world/kyogoku/magazine/
上記URLよりいつでも登録/解除可能です。
……………………………………………………………………………………………
[おやぢの独白 2]
◆次のシステムを利用して配信しています
    【まぐまぐ】 http://www.mag2.com/  ID:0000070169
【melma!】 http://www.melma.com/ ID:m00047477
【pubzine】 http://www.pubzine.com/ ID:015199

[おやぢの独白 2]は、転載・複写・自由です
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

inserted by FC2 system