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            非  原  理  教  会
              不良食口<おやぢ>の独白
                                                     1999/10/04  Vol.009
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こんにちわ、おやぢです。

連載「非フィクション劇場〜サイビジャンキー」第五回目です。
霊感商法体験記の最終回になります。
完璧なノンフィクションではありませんが、事実に基づいたリアルな内容です。
※今回初めて受信されたかたは、↓バックナンバーをご覧ください。
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              非フィクション劇場

          サ イ ビ ジ ャ ン キ ー
                             たつ せいぞう
■連載005■

・霊感商法(4)

 それまで、天水先生に対して「サエないせーんせ」などと侮っていたぼくだが
、今はもっともっと話を聞きたい気分になっている。…不思議だ。

「それから…お武家さんというとですね、大奥などを代表として、女性関係が大
変乱れていますよね。ですから、そこには女性特有の嫉妬や恨みやが渦巻いてい
るのです。いうなれば愛の恨みですよね。このような因縁を色情因縁というので
す。
ところで、たつさんの家系には淋しい思いをして亡くなった女性の恨みの念が出
ていますね。男からもて遊ばれて捨てられたとか、夫の浮気で離縁したとか…で
すね。また、たつ家の男性も、妾をつくったとか、不倫をしたとか、女遊びをし
たとか…そういう家系ですよね。こういう女性の恨みのある血統だと、女系にな
りやすいんですよ。あるいは、男性の運勢が弱くなるとか、反面、女性が強くな
るという結果が現れたりするんですよね」

 ぼくはそのことを聞いて青くなった。
「先生!たつ家は、じいちゃんと、とうちゃん、二代続けて婿養子に迎えたんす
よ。ぜんぜん、そ、その、じょ女系という家系すっよ!」
「ふむ、やっぱりそうですか…」
 と、天水先生。眉間に皺を寄せて難しそうな顔をしている。

「それで、妹が二人いるんすけど、とっても気ぃ強いんすよね…」
 あたっているだけに、怖い。じゃあぼくが結婚しても生まれる子供は女の子ば
かりなんだろうか。かわいくていいけど、嫁にいったら老夫婦が二人っきりでさ
びしいだろうなあ。あーいやだないやだな。

「絶家の家系ともいいますよね。男の子が生まれないか、生まれても夭折したり
病弱だったりするんですよね」
 淡々と天水先生が語る。なにかこう、だんだんえらく見えてきた。キリスト様
お釈迦様のようにすがりたくもなってきた。

「霊界は大きく三層に分かれています。一番上が天界といって、義人聖人クラス
のイエスキリストやお釈迦さまがおられます。その下が中間霊界、良心家がいく
といころなんです。そして一番下が地獄。この世で罪を犯した人がいくのです。
霊界の位置というのは実は自分で決めるんですね。天界はまばゆい光に満ちてい
て美しくいい香りが漂っています。地獄には閻魔大王はいませんが、暗く寒く異
臭がします。皆貪り合っているんです。たとえばエゴ丸出しで生きてきた人の魂
はどす黒く、腐っています。そういう人が、世のため人のために生きてきて輝い
ている魂のが集まるところにはいづらいのです。場違いなんです。それで、自然
と類は友を呼ぶというように、同じような魂が集まってしまうのです。たつさん
は死んだらどの霊界にいくと思いますか?」

「んー、そーっすね、ぼくは深夜の交差点で車が通ってなくても、信号が赤だっ
たらキチンと青になるまで待ってるし、40キロ制限道路ならチキンと40キロ
速度を守ってますから、世のため人のためになることはしてなくても、人様に迷
惑はかけてないんで、中間霊界ってとこすかね?」

 ぼくは別に、罪なんて犯していないから、中間霊界にでもいくんだろろうなぁ
、などと漠然と思っていたのだ。しかし、天水先生の次の言葉でまたまた青くな
った。

「そうですか、中間霊界ですか。でもですね、たつさん。天法といわれる天の法
律では色情の罪が一番重いのです。殺人や泥棒よりも罪が重いのです。不純異性
交友、いわゆる桃色遊戯ですが、これは完全にひっかかります。また、フリーセ
ックスや不倫などは相当罪が重いのです。実際、肉体関係を結ばなくても淫らな
事を思っても罪になります。聖書のマタイ書には『情欲をいだいて女を見る者は
、心の中ですでに姦淫をしたのである』と書いてあります。また『もしあなたの
右目が罪を犯させるなら、それを抜き出して捨てなさい』とも書いてあります。
それくらい色情の罪は思いのです。どうですかたつさん、今まで地獄にいくよう
な罪は犯していませんか」

 ひぇー、そんなぁ…頭の中はいつもアチラの妄想で一杯だというのに、これじ
ゃぁ中学時代の同級生はみんな地獄だぞ。

「先生、ぼくはやっぱり地獄っす。ということはご先祖様はみんな地獄なんすか」

「名前に現れた凶数と因縁線をみると、殆どそうですね。ご先祖さまは地獄で苦
しんでおられます。もし、生きている間に何が罪なのか知っていれば罪は犯さな
かったですよね。でもご先祖さまは知らなかったんです。ですからこんなはずじ
ゃなかったと、地獄で苦しみもがいておられるのです。救いを求めておられるの
です。もし、ここで悪因縁を断ち切らないとたつさんの後孫にも影響が出てきま
すよ」

「先生!んじゃあどうしたらいいんすか」

「それはですね、お守りを持てばいいんです。因縁が雨のように降り注いでいる
わけですから、たとえて言えば雨の時に傘をさすように、それを除ける傘のよう
な役目をするお守りを持つ事が必要なんです。三つの代表的な相、三大相という
のを知ってますか」

「いいえ…」

「三大相というのは、墓相、家相、印相のことです。お墓の石が欠けたりすると
良くないとか、鬼門の方角に便所をつくるのはいけないとか言われますよね。墓
相にも家相にも印相にも吉相と凶相があります。良い相は幸せを呼びますが悪い
相は不幸を呼び寄せますし、魔に入られてしまうのです。墓相というのはお墓の
向きや形で、氏族を守るものです。家相は間取りのバランスや方角を見ます。表
札もそうです。これは家族を守るものです。印相は個人を守るものですが、名は
体を表すというように、自分自身の名前を彫り込んだ印鑑のことです。しかし、
いくらお金があるからといって、個人の守りである印相をおろそかにして立派な
お墓を作ったり、立派な御殿をつくったりしたらかえってよくないのです。物事
には順序があります。個人の土台をしっかり作ってこそ家族の幸福がありますし
、氏族の幸せがあるのです。ですからまず個人の相、印相をよくする事が大事な
のです」

「じゃあ、ハンコをつくればいいんすか」

「いえ、ただ単にハンコをつくったからといってよくなるのではありません。私
がお勧めするのは"天運守護印"といいまして、私どもの大先生が断食や水行をし
ながら祈りを込めて彫ってくださるお守りの印鑑なんです。たつさんの画数、ホ
ラこの画数は凶数ですよね、ここから魔が入ってくるので、この画数を特に運勢
を強めて彫るのです。例えば木という漢字は4画で凶数ですが、このように印鑑
独特の書体の印相体で彫ると3画になって吉数になるんです。凶数を吉数に変え
て祈りを込めながら彫っていくんですね。ですから大先生が40日40夜、断食
や水行と祈とうをされながら彫られるので時間もかかりますし、真心のこもった
浄財も必要です」

「俗にいう、魂がこもってるってヤツっすか。でも、ぼくハンコもってるっすよ」

「そうですか、では印相鑑定してあげましょう。ちなみに凶相印というのはです
ね、小判型つまり楕円ですね、そして色が黒い、めくら判といって腹のところに
欠き込みがあるもの、長さが60ミリ以下のものなどです。ちょっと見せてもらえ
ますか」

「…はい、これ中学の卒業式のときもらったヤツなんすけど」
と、手渡したときに、またまたまた青くなった。

「たつさん…これ、凶相印そのまんまですよ」

「しぇー!ありゃー、こんなの持ってたから運勢よくなかったんすね。先生、そ
れじゃ一本いいのつくってください」

「たつさん、その気持ちはわかりますが、"天運守護印"は一本ではだめなんです。
それを説明する前に吉相印の条件についてお話します。まず、印面は正円でなけ
ればなりません。何故かというと印面は人生と宇宙を表していて、八方位に対応
しています。例えば印面右上は金運を表しています。この所が欠けてる人はお金
が貯まらないとか、流れてしまったりといったようなことがおきます。次に最低
三本は必要です。実用的にいえば、実印、銀行印、認印ということですが、三本
ということに意味があります。宇宙森羅万象は三数(さんすう)でなりたってい
ます。例えば、固体、液体、気体の三相とか色や光の三原色とか三度目の正直と
か…ですね。また、ものを支えるには最低三点必要ですね。二点ではグラグラし
ますが三点で安定しますよね。で、それぞれ彫り方があって、例えば銀行印は財
が流れるのを防ぐ意味で横書で彫ります。次に長さですが、最低60ミリ必要で
す。還暦というものがあるように人生60年を1サイクルとして宇宙の法則は成
り立っていますから最低60ミリは必要なのです。75ミリや90ミリというの
もあります。おじいさんの印鑑を譲りうけて彫り直した短い印鑑とか、もともと
短いものは短命相というんです。そして、材質は象牙が一番いいんです。象はお
釈迦様がお乗りになった神聖な動物といわれています。神仏とご縁を持つ為にも
象牙がいいんです」

「はぁー、それじゃ三本セットでいくらくらいするもんなんすか」

「いろいろな種類がありますけど、その人によって違います。たつさんの場合、
特に色情の因縁が強いので因縁消滅の祈願をして先生に彫っていただくことにな
ります。たつせいぞうさんの総画数は27ですから、27数以上のものを授から
れたらいいですね」

「しぇーっ、そんなするもんすか」

「たつさん、私も授かったんですよ。授かられたらいいですね」

 今まで黙っていた、ていうか少しコックリコックリしていた彼女が急にフォロ
ーしだした。口と目を半眼にしながらも、時折、眠気を振り払うように天水先生
の話にやけに大きな相づちを打っていた彼女だった。が、今こそ私の出番!とば
かりに目を輝かせて話し出したのだ。パンフレットをめくりながら

「この福寿印のセットは30万円ですよね、あ、この天慶印は40万円ですよ。
たつさんは天慶印なんかいいじゃないですか。40というのは魔を切る数なんで
すよ。この天宝印は75ミリでとっても立派なんですよ。100万円の多宝印は
90ミリで胴の部分に多宝塔が金で象嵌してあるんです、家宝になりますよ…」
 などと、すごい金銭感覚の話をする。

「あ、あ、じゃ、この福寿印でいいっすよ。これお願いします。で、彫ってくれ
る大先生は今どこにいるんすか」

「杉並区、浜田山の天運観相協会というところにおられまして、日夜修行をされ
ておられるんです。橋本研臣(ハシモトケンシン)先生といわれまして、私は大先
生の弟子です」

「あ、そうすか。じゃ、よろしく言ってください」

「たつさん、ではこれに書いてもらえますか」

 お壷さまの会場で見たのと同じ契約書が彼女の鞄から出てきた。
「大先生が四十日四十夜、祈りを込めながら彫ってくださいますので、お届けで
きるのは一ヵ月半後くらいになります。また、特に祈願することがありましたら
、この用紙に書いてください」

 差し出された"天運祈願用紙"なるものに、ぼくはためらわず「お金が貯まりま
すように」としっかり書いた。三分の一以上入金しないと、印材を仕入れられな
いというので頭金として10万円を支払い、残りは明日払うことにした。

 契約書の控えをもらって、ふーやれやれ、長い話だったがこれでまたいい買い
物をしたぞ、天水先生、田中さん「じゃ、どうもぉー」とお別れの挨拶をしよう
としたのだが、なにやらまだ話があるらしい。
「それから、たつさん。大先生が四十日四十夜の御祈祷をされている間、初水行
(はつみずぎょう)をしていただきたいんです。この2つのグラスに朝一番の水
を汲んで、お壷さまの前において手を合わせるんです」

 彼女は鞄から半紙に包まれた小さなグラスを差し出した。どうりで女の人の鞄
にしてはデカかったわけだ。さっき見た印材の見本とかいろんなものが次から次
と出てくる。

「細かい泡粒がコップにつくことがあるんですけど、これは、御先祖さまが喜ば
れているときなんですよ」

「へぇーそうなんすかぁ」

「あ、それから、魔に入られない為に、黙示行(もくしぎょう)をやっていただ
きたいんです。素晴らしい印鑑を授かったのに、人にこのことを話してしまうと
せっかく頂いた"徳"を逃がしてしますのです。誰にも話さないというが黙示行な
んです」

「んーと、じゃぼくは初水行と黙示行を四十日間やればいいんすね」

「ええ、そうです。頑張ってください」

「じゃ、どーも」

 長い話がやっと終わった。ぼくはとうとう豪華な印鑑を買ってしまった!いや
、授からせていただいた。懐は淋しくなったけど、これでやっと運勢が上昇する
んだ、するんだ、するんだ!と自分に言い聞かせながら寝床についた。
 とうとうぼくは、30万円也の福寿印のセットを買ったってしまった。
 んー、なんとも誇らしい気分だ。

 これでぼくは因縁罪障消滅されるんだ・・・


--------------------------------------------------------以降執筆中------



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〜〜 おやぢのつぶやき 〜〜

◆天宙主管の前に自己主管の完成(文先生の生涯のスローガンより)

「天宙主管の前に自己主管の完成」の域に達している人をぼくは知りません。
こんなこというと、決まってワンパターンの反論がきます。
「これって、すごくむずかしいんだよね。これができたら人格完成だよね」

だったら、なにかい?
アダムエバ問題が一番の罪ゆえに、一番主管がむずかしいってか。

「そうなんだよね、街でイイおんな見かけると、むらむらくるんだよね」
「おれの部下の姉妹でさ、かわいい子がいてさ、このまえ夜の牧会でさ、
ちょっとアダムエバになっちゃってさ。まだ、自己主管がたりないよね」
「今度の恩赦でゆるしてもらわなくちゃ」
てか。

めちゃくちゃ・・・・これじゃ、なんでもありだ。

いろんな兄弟からよくいわれました。
「おやぢ兄、夏になるとさ、たいへんだよな」
「なして?」
「まーた、とぼけちゃってぇ。ミニスカからでてる足とか見るとさ、ヤリタくな
んない?」
「んーにゃ。ぼく、おとこが好きだから」
「・・・・・」

などと、よくワリイ冗談を言っては面白がっていたものでしたが、現役の教会員
の方たち、かなりやりたいやりたいやりたいが募っているようですよ。

おいおいそこの新米君、これは普通の男の本能だよ。男子信者のホンネはそうみ
たいなんだよ。少しびっくりするけど、しょうがあんめえ。

もっと、びっくりしたのはな。
「カミサンと夜のお勤めするときさ、その気になんないときはアダルトビデオな
んか見ることない?」
「なに?アダルトビデオっておめ、あれだろ、おら見たことないけど、こんなこ
とするやつ」
「そそ、おやぢ兄は見ないのか?」
「男優はしたことあるけどな・・・でもそりゃ見るのはまずかんべぇ」
「なんで?もう祝福家庭だしさ、目的達成するためなら問題ないんじゃないの」
「そんなもんかねぇ・・・」

これが、実情なんですよ。
現役教会員がぼくに話し掛けてきた実際の内容です。
(ぼくの応えはフィクションですが・・・(^^ゞ)

ね、そこの君。そんなに悩んでいるなら、さっさと看板おろして心理カウンセラ
ーに駆けこんだほうがいいと思いますよ。


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